知的障害・発達障害のお子様は障害年金をもらえる?「できる」の本当の意味を解説

最終更新日: 2026-5-20 社会保険労務士 遠藤 隆

【結論】障害年金の審査における「できる」とは、他人の援助を受けずに「一人暮らしができること」を意味します。

知的障害や発達障害のお子様をお持ちの親御様から「うちの子は身の回りのことはできます」「特に問題ありません」とお聞きすることがよくあります。しかし、親御様が先回りして準備やサポートをした結果として「できている」場合、障害年金の制度上は「できる」とは判定されません。むしろ、そのまま申請すると障害の程度が軽く見積もられ、不支給や低等級の原因になってしまうため注意が必要です。

この記事が向いている方

✅ 知的障害や発達障害のお子様が障害年金をもらえるか知りたい方
✅ 親のサポートがあるため、日常生活能力がどう評価されるか不安な方
✅ 障害年金の診断書を医師に依頼する際の注意点を知りたい方
✅ 家族が「できる」と判断して不支給や低等級になるのを防ぎたい方

この記事の目次

  • 障害年金における「できる」の本当の基準とは
  • 障害年金の診断書は「一人暮らし」を前提に作成される
  • 知的障害・発達障害で障害年金を受給するための3つの基本要件
  • 障害年金の「日常生活能力」の判定基準と等級の目安
  • 家族が「できる」と判断して不支給・低等級になった失敗事例
  • 新横浜・川崎障害年金相談センターによるヒアリングサポート
  • よくある質問(FAQ)
  • まとめ
  • ご相談について

障害年金における「できる」の本当の基準とは

障害年金の審査における「できる」に対する回答は、「他人の手助けなしで、自分一人だけで適切な行動ができる」ということです。

多くの親御様は、お子様が幼少期の頃から傍らに寄り添い、困らないよう何事につけ先回りして準備や声かけをしてこられたかと思います。例えば、「声をかければ着替えができる」「用意されたご飯なら食べられる」という状態は、親御様の強力なサポートがあって初めて成立している状態です。

👉 親の援助があって成立している「できる」は、障害年金では「できない(要援助)」とみなされます。

わが子への愛着やこれまでの教育の成果から、つい「できる」と言いたくなるお気持ちは痛いほど理解できます。しかし、障害年金の申請においては、その思い込みが全くの逆効果にしかならないケースが非常に多いのです。

障害年金の診断書は「一人暮らし」を前提に作成される

障害年金の診断書における日常生活能力の判定は、「現に家族と同居して援助を受けている場合でも、一人で暮らしていると想定した場合」を前提として評価しなければなりません。

医師は医学の専門家ですが、必ずしも障害年金の社会保障的な大前提(一人暮らし前提の評価基準)に精通しているわけではありません。ここを押さえずに医師に日頃の様子を伝えてしまうと、実態よりも障害の程度が低い(軽い)診断書が作成されてしまいます。

医師はお子様の日常生活をすべて把握しているわけではない

主治医が診察室でお子様と接する時間は、月に数十分程度です。診察室の中で「体調はどうですか?」「変わりないです」といったやり取りだけで終わってしまうと、医師はお子様の本当の日常生活の苦労を知ることができません。

障害年金を受給するためには、医師にお子様の日常生活状況を正確かつ詳細に伝える必要があります。

知的障害・発達障害で障害年金を受給するための3つの基本要件

知的障害や発達障害で障害年金(主に障害基礎年金)を受給するためには、以下の3つの基本要件を満たす必要があります。

要件項目 知的障害の場合の扱い
発達障害の場合の扱い
① 初診日要件 出生=初診日とみなされるため、初診日の証明(受診状況等証明書)は原則不要です。
初めて専門医(精神科や心療内科等)を受診した日が初診日となります。
② 保険料納付要件 20歳前の障害となるため、保険料の納付要件は問われません。
20歳以降に初診日がある場合は、一定以上の保険料納付が必要です(20歳前初診なら不要)。
③ 障害認定日要件 20歳の誕生日の前日(障害認定日)以降に申請が可能となります。
初診日から1年6ヶ月を経過した日(障害認定日)以降に申請が可能となります。

👉 特に知的障害や、20歳前に初診日がある発達障害の場合、20歳になったタイミング(20歳前障害)で障害基礎年金を請求するのが一般的です。

障害年金の「日常生活能力」の判定基準と等級の目安

知的障害や発達障害の審査では、診断書の「日常生活能力の判定」の7項目がどれだけ一人でできるかが重要視されます。

  1. 適切な食事(準備から後片付けまで一人でできるか)
  2. 身辺の清潔保持(入浴、着替え、洗面、洗濯など)
  3. 金銭管理と買い物(計画的な消費や金銭の計算ができるか)
  4. 通院と服薬(規則的な通院や、確実な服薬ができるか)
  5. 他人とのコミュニケーション(他人の話を聞く、自分の意思を伝えるなど)
  6. 社会性(危機対応、手続き、集団行動ができるか)
  7. 身辺の安全保持・安全管理(危険を回避できるか、体調不良を訴えられるか)

これらの項目について、「できる」「概ねできるが援助が必要」「援助があればできる」「できない」の4段階で評価され、総合的に等級(1級〜3級)が判断されます。

家族が「できる」と判断して不支給・低等級になった事例

当センターに寄せられたご相談の中から、ご家族が「できる」と誤解していたために起きた事例をご紹介します。

【事例:ADHD・ASDを抱えるAさん(20歳)の場合】 ご家族は「身の回りのことは一通り自分でできる」と思い、医師の診察時にもそのように伝えていました。しかし実際には、服のコーディネートができず季節外れの格好をしたり、お風呂に入るのを忘れて何日も過ごしたり、お金があるとあるだけ使ってしまう状態でした。 医師はご家族の「できる」という言葉通りに診断書を作成したため、日常生活能力が高く評価され、結果は「不支給」となってしまいました。

このケースでは、親御様の「声かけ」や「事前の準備」があるから帳尻が合っていただけで、一人暮らしを想定すれば「できない」ことばかりだったのです。このように、家族の主観による「できる」は、障害年金の手続きにおいて不利益となります。

新横浜・川崎障害年金相談センターによるヒアリングサポート

社会保険労務士法人 ポラリス・コンサルティングが運営する「新横浜・川崎障害年金相談センター」では、ご依頼後にこの「できる・できない」の部分を徹底的にヒアリングします。

辛い現実と向き合うことが、受給への第一歩

当センターのヒアリングを通じて、「わが子が『できる』と思っていたことが、実は親のサポートがあるからで、本当は『できない』んだ」という現実に直面し、ショックを受け涙ぐむ親御様もいらっしゃいます。しかし、障害年金の最終目的は「適切な等級で受給すること」です。将来、親御様がサポートできなくなったときにお子様の生活を守るためにも、今、実態を正確に診断書に反映させる必要があります。

当センターでは、相談実績12,000件以上の経験に基づき、医師へのスムーズな情報提供をサポートいたします。ヒアリングで少しお辛い質問をすることもあるかもしれませんが、すべてはお子様の将来と障害年金受給のための一過程とご理解いただけますと幸いです。

よくある質問(FAQ)

Q. 「手伝えばできる」状態は、診断書ではどう扱われますか?

A. 障害年金の基準では「できない(要援助)」に該当します。 着替えや食事、買い物など、誰かの声かけや手助けが必要な状態は、一人で自立して行えているとは言えません。「援助がなければできない」という実態を正確に医師に伝える必要があります。

 

Q. 知的障害や発達障害があっても、一般企業で働いていたら障害年金はもらえませんか?

A. 働いていても障害年金を受給できる可能性は十分にあります。 就労している場合でも、職場からどのような配慮(業務内容の軽減、指示の明確化など)を受けているか、帰宅後に寝込んでしまうほどの疲弊がないかといった「労働実態」が考慮されます。

 

Q. 医師が「これくらいならできるでしょう」と診断書を軽く書く場合はどうすればいいですか?

A. 日常生活の具体的な困りごとをまとめた書面を医師に提出するのが有効です。 診察時の短い時間だけでは伝わらない自宅での様子を、客観的なエピソードとしてまとめる必要があります。当センターでは、医師に渡すための「日常生活状況の申立書(参考資料)」の作成代行を行っています。

 

Q. 障害者手帳(療育手帳)を持っていなくても、障害年金の申請はできますか?

A. はい、障害者手帳を持っていなくても障害年金の申請・受給は可能です。 障害者手帳と障害年金は、それぞれ根拠となる法律や認定基準が異なる全く別の制度です。手帳が3級やB判定であっても、障害年金で2級以上に認定されるケースは多くあります。

まとめ|「できる」の思い込みをなくすことが受給の鍵

  • 障害年金の「できる」は、他人の援助なしで「一人暮らしができるか」が基準
  • 親御様の先回りや声かけによる「できた」は、制度上は「できない」とみなされる
  • 医師はお子様の日常生活をすべて把握しているわけではないため、正確な情報提供が必要
  • 家族の「できる」という思い込みが原因で、不支給になる失敗事例が後を絶たない
  • 将来のお子様の生活を守るためにも、専門家(社労士)への相談が確実です

ご相談について

知的障害や発達障害のお子様が20歳を迎えられる際、障害年金の申請手続きに不安を感じる親御様は非常に多くいらっしゃいます。「うちの子の状況で受給できるのか」「医師にどう伝えたらいいか分からない」とお悩みの方は、ぜひ一度当センターへご相談ください。

状況に応じた具体的な進め方については、無料相談で個別にご案内しています。

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社会保険労務士 遠藤 隆
社会保険労務士 遠藤 隆
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