障害者手帳を取得するメリット・デメリット【社労士が解説】

※障害者手帳に関しては社会保険労務士は管轄外ですので、お近くの市区町村の役所にご相談ください

※障害年金に関するお問い合わせはこちら 

障害者手帳とは

障害者手帳には以下の3つの種類があります。

1. 身体障害者手帳 2. 精神障害者保健福祉手帳 3. 療育手帳

各々身体、知的、精神的な障害があるということが証明でき、福祉のサービスを受けるために使うことができます。

今回は身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳それぞれのメリットとデメリットについて詳しく説明いたします。

ポイント

身体障害者手帳

身体障害者福祉法に定める身体上の障害がある者に対して、都道府県知事、指定都市市長又は中核市市長が交付します。

障害の種類別に重度の側から1級から6級の等級が定められています。 (7級の障害は単独では交付対象とはなりませんが、7級の障害が2つ以上重複する場合、又は7級の障害が6級以上の障害と重複する場合は対象となります。) 

障害の種類(いずれも、一定以上で永続することが要件とされている は以下の通りです。

  •  視覚障害
  •  聴覚又は平衡機能の障害
  •  音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
  •  肢体不自由
  •  心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害
  •  ぼうこう又は直腸の機能の障害
  •  小腸の機能の障害
  •  ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害
  •  肝臓の機能の障害

身体障害者手帳を持つことのメリット

 税務的支援 

身体障害者手帳を交付されている方は、税制面での優遇を受けられます。

等級が1・2級の場合は特別障害者控除が、それ以外の場合は障害者控除が適用されます。

① 所得税の控除

障害者控除として27万円(特別障害者は40万円)が所得金額から差し引かれます。
配偶者や扶養親族に障害がある場合は、1人当たり27万円(特別障害者のときは1人当たり40万円)の障害者控除等を受けられます。

② 住民税の控除

 障害者控除として26万円(特別障害者は30万円)が控除されます。

③ 相続税の障害者控除

 相続される方が身体障害のある方の場合、85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者は20万円)が、

 障害者控除として相続税額から差し引かれます。

④ 自動車税・軽自動車税の減免、自動車取得税の減免

 身体障害者手帳を交付されている方が使用する車について、

 申請により自動車税・自動車取得税の減免を受けられる場合があります。

⑤ 預貯金の非課税対象化

 身体障害者手帳を交付されている方が、350万円までの預貯金、貸付信託、公社債、公社債投資信託などで受け取る利子などについては、

 一定の手続を要件に非課税となります。

 

各種割引制度による支援

身体障害者手帳をその場、あるいは事前に提示することで各種割引制度の対象となり、そのサービスが受けられます。

① 公共交通機関の割引
  1. JRなど、鉄道運賃の割引や減免が受けられます。
  2. JALやANAなどは、「身体障害者割引運賃」が適用されます。
  3. 多くのバス会社で、障害者割引運賃が設定されています。
  4. タクシー料金の割引が適用される場合があります。
② 各種料金の割引
  1. NHKの受信料の全額又は半額が免除されます。
  2. NTTの電話番号案内利用料が無料になります。
  3. 有料道路通行料金が割引になる場合があります。
  4. 携帯電話各社が利用料の割引制度を設けています。
③ 各種施設利用等での割引 美術館・博物館、動物園、映画館をはじめ、多くのレジャー施設やテーマパークなどで割引制度が設けられています。
④ 駐車場料金の割引や無料化措置 多くの駐車場で無料化や割引の対応を行っています。

 

保育面・教育面での支援

保護者の方が身体障害者手帳を持つ場合、ご本人が身体障害者手帳を持つ場合の2つの場合で、受けられる支援があります。

① 保育園への入園

 入園者ご本人や、保護者の方が身体障害者手帳を持っている場合で、それぞれ入園の優先順位が高くなる場合があります。

② 特別支援学校への入学

 特別支援学校への進学を希望する際、身体障害者手帳で障害の程度を証明することができます。

 

就労に向けた支援

就労面でのさまざまな支援が得られます。障害者雇用枠での就職が可能となるのもその一つです。企業は一定程度数、障害のある方を雇用する義務もあるため、就労への道が広がるという側面があります。

医療面での支援

重度の身体障害者手帳をお持ちの方の場合、医療費の一部が助成される「障害者医療費の助成制度」の対象となる場合があります。

身体障害者手帳を持つことのデメリット

身体障害者手帳が交付されること自体にデメリットと呼べるものはありません。

とはいえ、身体障害があることが公的に認定されること自体が、身体障害のある方ご本人・ご家族の方々の精神的な負担になる場合もあるようです。

また、身体障害者手帳を所持していることを知られたくないと考える方もいらっしゃいます。

しかし、身体障害者手帳を取得したこと自体は、ご本人などがあえて伝えない限り、それが他人にわかることはありません。

各種サービスを受ける際には身体障害者手帳を提示する必要がありますが、サービスを活用するかどうかはその都度ご自分で選択することもできます。

 

精神障害祉者保健福祉手帳

精神障害者保健福祉手帳を持つことのメリット

精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害の状態にあることを認定するものです。

精神障害者の自立と社会参加の促進を図るため、手帳を持っている方々には、様々な支援策が講じられています。

対象となる方 何らかの精神障害(てんかん、発達障害などを含みます)により、長期にわたり日常生活又は社会生活への制約がある方を対象としています。

対象とされるのは精神疾患があることにより日常生活において制限がある人です。

どれも精神疾患の初診時から6ヶ月以上経っていることが証明できる診断書が必要です。

  1. 統合失調症
  2. うつ病、そううつ病などの気分障害
  3. てんかん
  4. 薬物依存症
  5. 高次脳機能障害
  6. 発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等)
  7. そのほかの精神疾患(ストレス関連障害等)

2010年に障害者自立支援法が改定され、精神障害の対象に発達障害も加わったことから、発達障害の人も精神障害者保健福祉手帳を得ることができるようになりました。

精神障害者保健福祉手帳を交付された場合、2年ごとに更新する必要があります。提出するものは、申請書診断書です。

2年間で障害の程度がどう変わったのかを改めて確認し、必要であれば再判定を受けます。

精神障害者保健福祉手帳の等級は、1級から3級まであります。

  • 1級…精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
  • 2級…精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
  • 3級…精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの

精神障害者保健福祉手帳を持つことのメリット

受けられる補助について

<全国一律>
  • 公共料金などの割引
  • 市営、県営住宅への入居時の優遇
  • NHK受信料の減免 • 所得税の控除…1級:40万円/2級以下:27万円
  • 住民税の控除…1級:30万円/2級以下:26万円
  • 相続税の控除…1級:70歳になるまでの年数×12万円/2級以下:×6万円
  • 贈与税の控除…1級:6,000万円まで非課税/2級以下:3,000万円まで非課税
  • 自動車税・自動車取得税の軽減(1級のみ対象)
<市区町村による>
  • 鉄道・バス・タクシーの運賃割引
  • 上下水道料金の割引
  • 水族館・博物館など、公共施設などの入場料の割引
  • その他、各市区町村によるもの

障害者雇用について

精神障害者保健福祉手帳を取得していると、障害者雇用の対象となります。

事業者には障害者の法定雇用率が定められており、民間企業で2.3%国や地方公共団体で2.6%等と決められた数値以上の障害者の雇用が求められています。

精神障害者保健福祉手帳を持っていることによって一般雇用障害者雇用と2つの働き方を選択できます。

また、ハローワークで行っている障害者職場適応訓練のように、手帳を取得することで受けることのできる支援があります。

障害者雇用は障害者ということを企業が把握した上での雇用になるので、病状の理解を得られながら、大きな企業で仕事をする機会が得られます。

ただし、ハローワークを利用して求職活動される際に気を付ける点は、

精神障害者手帳を取得すると、障害者枠でない一般の求人へ応募するときにも企業によっては手帳を開示しなければならない場合もあるという事です。

精神障害者保健福祉手帳を持つことのデメリット

精神障害者保健福祉手帳を所持・取得することで、

「他人からの見られ方が変わってしまうのではないか」と、考えてしまう方もいらっしゃいますが、

手帳を所持していることは、自分から話したり提示したりしなければ他の人にわかることはありません。

また、「精神障害者だから」と日常生活において差別を受ける・不都合な経験をされるといったことは障害者差別解消法で禁止されていますので、

精神障害者保健福祉手帳を取得することで不利益になることはないと言えるでしょう。

 

療育手帳

療育手帳とは、知的障害児・者への一貫した指導・相談を行うとともに、これらの者に対して各種の援助措置を受けやすくするため、

児童相談所又は知的障害者更生相談所において知的障害と判定された者に対して、都道 府県知事又は指定都市市長が交付するものです。

知的障害の定義は、

  • 知能機能に制約がある
  • 適応行動に制約がある
  • 発達機能に障害がある  の3つになります。

一般的には、他人とのコミュニケーションが取りにくい場合がある、頭脳を使ったり読み書きや計算をしたりすることが苦手で、日常生活や社会生活に困難が生じることがあるといわれています。

療育手帳は、各自治体の独自の制度のため、具体的な判定基準や判定区分は都道府県によって違いがあります。

判定区分は、重度Aそれ以外Bにわける自治体が多いですが、国の厚生労働省の指導は、重度がA、それ以外はBと国は2つの区分にだけ分けています。

横浜市では障害の程度によって、

  • A1(最重度 IQ20以下)
  • A2(重度 IQ21~35)
  • B1(中度 IQ36~50)
  • B2(軽度 IQ51~75)

の4つに認定しています。程度により支援の内容が異なる場合があります。

療育手帳を持つことのメリット

保育教育

幼稚園

加配保育士(個別に園生活をサポートしてくれる先生)についてもらえる

保育園
  • 障害児本人または保護者や家族が療育手帳を取得している場合、入園の優先順位が高くなる
  • 特別利用枠で利用できる
  • 加配保育士についてもらえる
特別支援学校

入学を希望する場合に必要な場合がある

就職活動

障害者雇用枠、特例子会社で就職できる。

特定求職者雇用開発助成金、障害者トライアル奨励金、障害者雇用奨励金などの支給対象障害者になる。

助成金や奨励金は企業にお金が入るので、入社を前向きに考えてくれることに繋がる可能性があります。

 

交通機関


医療

心身障害者医療費助成

例:神奈川県厚木市

65歳以前から診断を受けていて療育手帳A1~B1で所得が一定額未満の場合、医療費の自己負担額が助成される

訓練・介護器具購入費の助成

例:神奈川県相模原市

18歳未満で療育手帳がA1またはA2の場合、在宅生活上必要な訓練器具などの購入費用の一部が助成される(最大36,000円)

災害時

避難行動要支援者名簿に登録でき、避難支援を受けられる 避難時に支援などが必要なことを示す「要支援者ベスト」を無料でもらえる(神奈川県海老名市)

各種料金


各種レジャー施設


税金


手当


生活
 

市営・県営住宅入居の優遇

例)神奈川県横浜市

  • 入居当選率を、療育手帳がA1~B1の場合は市営・県営ともに優遇、B2の場合は市営のみ優遇
  • 入居収入基準の月収額の緩和
  • 住宅使用料の特別減額制度の適用(所得制限あり)
粗大ゴミの廃棄物処理手数料の免除

例)東京都羽村市

 特別児童扶養手当受給世帯、または療育手帳1度または2度を所持していて世帯全員の市民税が非課税の場合、手数料を免除

粗大ゴミの持ち出し代行

例)千葉県市原市

  療育手帳が重度または最重度の場合、持ち出し代行

宅配手数料の割引

例)パルシステム  手数料が50%割引

障害者扶養共済(しょうがい共済)に加入できる

保護者が亡くなったり重度障害を負ったときなどに月額2万円または4万円の年金を一生涯支給される共済に加入できる(掛金は保護者の年齢に応じた金額を納める)

必要書類への代用

各申請で別途書類が必要な場合、療育手帳のコピーで代用できることがある

療育手帳を持つことのデメリット

療育手帳を所持・取得することで、「周りの人に偏見の目で見られやしないか」と心配する方もいらっしゃいますが、

他の手帳同様、手帳を所持していることは、自分から話したり提示したりしなければ他の人にわかることはありません。

後はあえて言うなら手帳の取得や更新の手続きが面倒ぐらいでしょうか。

療育手帳も取得することで不利益になることはないと言えるでしょう。

 

 

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