【社労士監修】人工弁で障害年金はもらえる?受給条件・等級・金額を徹底解説
最終更新日: 2026-5-18 社会保険労務士 遠藤 隆

【結論】心臓に人工弁を置換(装着)した方は、障害年金の対象となります。
人工弁(機械弁・生体弁)を装着した場合、障害年金では原則として障害厚生年金3級の対象になります。ただし、受給には「初診日に厚生年金加入中だったこと」などの条件があります。また、弁形成術は原則として人工弁の認定基準には該当しません。
この記事が向いている方
✅ 心臓の弁膜症などで人工弁(機械弁・生体弁)の置換手術を受けた方
✅ これから人工弁の手術を受ける予定があり、障害年金がもらえるか知りたい方
✅ 自分の手術が「人工弁置換術」か「弁形成術」か、年金の対象になるか迷っている方
✅ 手術後の体調や就労に不安があり、経済的なサポートを求めている方
この記事の目次
- そもそも障害年金とは?受給のための3つの基本要件
- 人工弁(機械弁・生体弁)の基礎知識と手術の種類
- 人工弁における障害年金の認定基準と等級の目安
- 人工弁で受給できる障害年金の金額目安(2026年度版)
- 【最重要】人工弁で障害年金を申請する際の5つの注意ポイント
- 【特例】初診日が国民年金でも「老齢年金の障害者特例」を受けられる可能性
- 当センターの受給事例|大動脈弁置換術により障害厚生年金3級を受給したケース
- 人工弁の障害年金に関するよくある質問(FAQ)
- まとめ|人工弁は初診日の確認と早めの手続きが受給の鍵
そもそも障害年金とは?受給のための3つの基本要件
障害年金とは、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、国から支給される公的年金です。原則として20歳から64歳までの方が対象となります。
人工弁で障害年金を受給するためには、以下の3つの基本要件をすべて満たす必要があります。
- 初診日要件:人工弁の原因となった心臓の病気(弁膜症など)で、初めて医師の診察を受けた日(初診日)に、公的年金に加入していること。
- 保険料納付要件:初診日の前日において、一定以上の年金保険料を納付または免除されていること。
- 障害状態要件:障害認定日(原則として初診日から1年6ヶ月が経過した日、または人工弁を装着した日)において、国が定める障害等級に該当していること。
👉 特に心臓の病気は「初めて病院を受診した日(初診日)」が数年から十数年前であるケースも多いため、初診日の特定が最初の重要なステップとなります。
人工弁(機械弁・生体弁)の基礎知識と手術の種類
人工弁とは、心臓の弁膜症に対して、自分の弁を人工の弁へ置き換える手術です。障害年金では、この「人工弁置換術」を受けた場合、原則として障害厚生年金3級に認定されます。
症状が進行すると、手術によって弁の治療を行います。手術には主に以下の2つの方法があります。
- 弁置換術(人工弁):悪くなった弁を取り除き、人工の弁に置き換える手術です。人工弁には、チタンなどでできた「機械弁」と、牛や豚の組織で作られた「生体弁」の2種類があります。
- 弁形成術:自分の弁を取り換えずに、修理して機能を回復させる手術です。人工腱索の使用や人工弁輪(リング)の装着などを含みます。
👉 障害年金の制度において、どちらの手術を受けたかによって受給可否が大きく分かれるため注意が必要です。
人工弁における障害年金の認定基準と等級の目安
人工弁を装着した場合の障害等級は、原則として「3級」に認定されます。心疾患による障害年金の認定基準(障害の状態)は、国によって以下のように定められています。
| 等級 | 障害の状態・認定基準(心疾患) |
人工弁に関する規定
|
| 1級 | 病状が重篤で安静時においても心不全症状があり、常時他人の介助・見守りが必要な状態。 | - |
| 2級 | 軽度の労働や日常生活に著しい制限があり、一人での生活が困難な場面が多い状態。 |
検査所見や臨床所見が重い場合に該当の可能性あり。
|
| 3級 | 人工弁を装着したもの、または一定の異常検査所見と臨床所見があり、就労に制限がある状態。 |
人工弁を置換(装着)した場合は原則として3級。
|
人工弁で受給できる障害年金の金額目安(2026年度版)
人工弁で原則認定される「障害厚生年金3級」の受給額には、国による最低保証額が設けられています。
受給できる年金の種類と金額の目安は以下の通りです。
- 障害厚生年金3級:年額 635,500円(最低保証額) ※過去に支払った厚生年金保険料の金額(報酬比例部分)によって、これ以上の金額になる場合があります。
- 障害厚生年金1級・2級:3級より上位の等級に認められた場合は、障害基礎年金に加えて障害厚生年金(報酬比例部分)が上乗せして支給されます。
👉 3級の受給であっても、毎月約5万円の安定した収入が国から支給されるため、術後の生活や体調に合わせた働き方を選ぶための大きな経済的支えになります。
【最重要】人工弁で障害年金を申請する際の5つの注意ポイント
人工弁での障害年金申請には、他の傷病とは異なる特有の実務上のルールがあります。以下の5つのポイントを必ず確認してください。
クリックできる目次
①初診日に「厚生年金」に加入していることが必須
人工弁の原則等級は「3級」です。障害年金の制度上、3級が設けられているのは「障害厚生年金」だけです。そのため、初診日に会社員や公務員として厚生年金に加入していたことが必須条件となります。 👉 初診日に自営業、主婦、学生などで「国民年金(障害基礎年金)」だった場合、障害基礎年金には3級がないため、人工弁を装着していても障害年金を受け取ることができません。
②人工弁への置換術を行った日が「障害認定日」になる
通常、障害年金は初診日から1年6ヶ月が経過した日(障害認定日)にならないと申請できません。しかし特例として、初診日から1年6ヶ月以内に人工弁の置換手術を行った場合は、その「手術日(置換日)」が障害認定日となります。 👉 手術をした日からすぐに障害年金の申請手続きに進むことが可能です。
③遡及請求(さかのぼり請求)の手続きが一部簡素化される
過去に人工弁の手術を受け、申請が遅れてしまった場合、過去に遡って年金を請求する「遡及請求」が可能です。通常は「過去(認定日)」と「現在(請求日)」の2枚の診断書が必要ですが、人工弁の場合は「現在の診断書」1枚だけで、手術日に遡って請求できる特例があります。 👉 手続きの負担や診断書費用の負担を軽減して申請を行うことができます。
④複数の人工弁を置換しても原則として3級相当
大動脈弁と僧帽弁など、複数の弁を同時に、または時期をずらして人工弁に置換(重弁置換)した場合であっても、国への申請上は原則として「3級相当」として扱われます。 👉 複数の弁を置換したからといって、自動的に2級や1級に繰り上がるわけではありません。
⑤「弁形成術」の場合は原則として対象外
弁置換術ではなく、自身の弁を修理する「弁形成術(人工腱索、人工弁輪含む)」を受けた場合、「人工弁を装着したもの」という一発で3級になる基準には該当しません。 👉 弁形成術の場合は、術後の経過観察における心電図やエコーの検査数値、息切れなどの臨床症状が一定の基準を満たしている場合のみ、3級(またはそれ以上)の受給可能性があります。
【特例】初診日が国民年金でも「老齢年金の障害者特例」を受けられる可能性
「初診日が国民年金だったから、人工弁でも3級はもらえない…」と諦めるのはまだ早いです。
現在、「特別支給の老齢厚生年金」を受給している60歳から64歳までの方であれば、障害年金自体は不支給(3級のため)であっても、老齢年金の「障害者特例」の対象になる可能性があります。 障害者特例が認められると、老齢厚生年金の「定額部分」が上乗せして支給されるため、結果として受け取る年金額が大きく増えることになります。
👉 年齢や年金受給状況によって活用できる特例が異なるため、専門家への確認を強くおすすめします。
当センターの受給事例|大動脈弁置換術により障害厚生年金3級を受給したケース
当センター(新横浜・川崎障害年金相談センター)でサポートした、実際の受給事例をご紹介します。
- ご相談者:横浜市在住の40代男性(会社員)
- 傷病名:大動脈弁閉鎖不全症(二尖弁によるもの)
- 決定した年金:障害厚生年金3級
- 受給額:年額 約72万円(遡及額 約45万円)
【経緯とサポート内容】 健康診断を機に動悸を感じるようになり、専門病院を受診したところ大動脈弁閉鎖不全症と診断されました。経過観察を続けていましたが、医師から手術適応の判断が下り、大動脈弁置換術により人工弁を装着されました。 初診日から1年6ヶ月以内に手術が行われていたため、手術日を障害認定日として過去に遡る「遡及請求」を実施。的確な診断書の作成依頼を行い、無事に障害厚生年金3級、および過去の遡及分を含めた受給が決定しました。
人工弁の障害年金に関するよくある質問(FAQ)
Q. 人工弁の手術を受けたら、働きながらでも障害年金はもらえる?
A. はい、働きながらでも問題なく受給できます。人工弁の障害厚生年金3級は、就労状況による制限がほとんどありません。デスクワークをされている方はもちろん、術後にフルタイムで復職されている会社員の方でも、人工弁を装着している事実をもって受給が可能です。
Q. TAVI(カテーテル人工弁)でも障害年金の対象になりますか?
A. はい、TAVI(経カテーテル大動脈弁置換術)で人工弁を装着した場合も、原則として障害厚生年金3級の対象となります。重要なのは「人工弁を装着したかどうか」であり、開胸手術かカテーテル治療かは問いません。
Q. 人工弁を装着してから数年経っていますが、今からでも申請できる?
A. はい、今からでも申請可能です。人工弁を置換した手術日を基準として、過去5年分まで遡って年金を受け取ることができる「遡及請求」が可能です(5年を過ぎた分は時効により消滅します)。遅くなればなるほど受け取れるはずの年金が減ってしまうため、お早めの申請が大切です。
Q. 生体弁と機械弁で、障害年金の判定に違いはある?
A. いいえ、生体弁であっても機械弁であっても、障害年金の審査における扱いは同じです。どちらの弁であっても「人工弁を装着したもの」として原則3級に認定されます。
Q. 自分で申請するのと、社労士に依頼するのでは何が違う?
A. 主に「初診日の特定・証明」と「手続きの正確性・スピード」が異なります。人工弁の申請では、何年も前の古い初診日を証明しなければならないケースが多く、カルテの廃棄などで一般の方が挫折してしまうことが少なくありません。専門の社労士が代行することで、不支給リスクや手続きの負担を最小限に抑えられます。
まとめ|人工弁は「初診日の確認」と「早めの手続き」が受給の鍵
人工弁における障害年金申請のポイントを振り返ります。
- 人工弁(機械弁・生体弁)を装着した方は、原則として障害厚生年金3級の対象。
- 受給するためには、初診日に厚生年金に加入していたことが必須要件。
- 初診日から1年6ヶ月以内に手術をした場合、手術日が障害認定日となる。
- 自身の弁を修理する「弁形成術」は人工弁の基準対象外となるため注意が必要。
- 過去の分をさかのぼって受け取れる遡及請求が可能なケースがある。
人工弁置換術は体への負担も大きく、術後の生活や仕事への向き合い方に悩まれる方も多くいらっしゃいます。障害年金は、そうした方のこれからの生活を支えるための正当な権利です。
ご相談について
人工弁の手術を受けられた方、または受ける予定の方で、障害年金の手続きに不安や疑問はありませんか?
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