【社労士監修】傷病手当金と障害年金は併給できる?調整ルールと返還リスクを徹底解説
最終更新日: 2026-6-03 社会保険労務士 遠藤 隆
【結論】傷病手当金と障害年金は、同時に両方を受け取る「併給」自体は可能です。
ただし、これらはどちらも所得を補償する制度であるため、同じ病気やケガ(同一傷病)を理由に両方を受給する場合、傷病手当金側の支給額が減額または支給停止される「併給調整」が行われます。
この記事が向いている方
✅ 傷病手当金を受給中で、今後障害年金の申請も検討している方
✅ 「併給調整」によって自分の手取り額が減ってしまうのか不安な方
✅ 過去に遡って障害年金が支給された場合の返還リスクを知りたい方
✅ 損をしないための最適な申請タイミングを専門家に相談したい方
この記事の目次
- 【結論】傷病手当金と障害年金は「併給」が可能!ただし支給額の調整に注意
障害年金が優先され、傷病手当金が減額または支給停止される - なぜ傷病手当金と障害年金の「併給調整」が行われるのか?
- 【パターン別】併給調整のルール|同じ傷病か、別の傷病か
① 同一の傷病の場合(傷病手当金が調整される)
② 異なる傷病の場合(調整なしで両方全額受給)
③ 障害基礎年金のみ受給する場合(調整なしで両方全額受給) - 【一目でわかる】傷病手当金と障害年金の併給調整パターン一覧表
- 同時に申請・受給する際の実務上の注意点と「返還金」リスク
過去に遡って障害年金が決まった場合は返還義務が発生する
「同一の傷病かどうか」は健康保険組合や協会けんぽが個別判断する - 傷病手当金から障害年金へスムーズに切り替えるための最適なタイミング
- 傷病手当金と障害年金の併給に関するよくある質問(FAQ)
- まとめ|仕組みを正しく理解して損のない受給を
【結論】傷病手当金と障害年金は「併給」が可能!ただし支給額の調整に注意
傷病手当金と障害年金は、どちらも受給要件を満たしていれば同時に受給(併給)すること自体は法律上認められています。
よく「この2つは一緒にもらえない(併給不可)」と誤解されがちですが、完全にどちらか片方しか選べないわけではありません。注意すべきなのは、両方の対象となった場合に「傷病手当金の金額が調整される」という点です。
健康保険法第108条では、同一傷病による障害厚生年金等を受給している場合の傷病手当金との調整が定められています。
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障害年金が優先され、傷病手当金が減額または支給停止される
同じ病気やケガが原因で障害年金と傷病手当金の両方を受け取れる状態になった場合、国や健康保険のルールでは「障害年金」が優先されます。
このとき、傷病手当金は全額がそのまま支給されるわけではなく、障害年金の額に応じて減額されるか、あるいは全額支給停止となります。
👉 重要:どちらか一方しか申請できないのではなく、両方受給できるが「傷病手当金側で引き算が行われる」という仕組みです。
なぜ傷病手当金と障害年金の「併給調整」が行われるのか?
傷病手当金と障害年金の間に調整がかけられる最大の理由は、健康保険法等に基づく「二重給付の防止」のためです。
傷病手当金は「病気やケガで働けない期間の休業補償(給与の約3分の2)」であり、障害年金は「長期にわたり障害が残ったことに対する生活・所得補償」です。これらはどちらも「働けないことによる収入減少をカバーする」という共通の目的を持っています。
そのため、同じ事由に対して両方の制度から満額を支給してしまうと、公的な所得補償の二重取り(過剰な給付)になってしまうため、制度間でバランスを取るための調整(併給調整)が行われます。
【パターン別】併給調整のルール|同じ傷病か、別の傷病か
障害年金と傷病手当金を受け取る際、すべてのケースで減額されるわけではありません。ポイントは「病気やケガの原因(支給事由)」と「障害年金の種類」です。
① 同一の傷病の場合(傷病手当金が調整される)
原因となった病気やケガが同じ場合(例:うつ病で休職し傷病手当金をもらい、そのうつ病で障害年金を申請する等)、併給調整の対象となります。 障害厚生年金の「日額換算額」が傷病手当金の「日額」よりも低ければ差額が支給され、障害厚生年金の方が高ければ傷病手当金は全額支給停止になります。
② 異なる傷病の場合(調整なしで両方全額受給)
傷病手当金をもらっている原因と、障害年金をもらっている原因が全く別のものである場合は、併給調整されません。 例えば、「骨折」による休職で傷病手当金を受給しながら、以前から認定されている「人工透析(慢性腎不全)」を理由に障害年金を受給するケースなどです。この場合は、両方を全額受け取ることができます。
③ 障害基礎年金のみ受給する場合(調整なしで両方全額受給)
初診日に国民年金に加入していた方が受給する「障害基礎年金(1級・2級)」のみを持っている場合、同一の傷病であっても傷病手当金との併給調整は行われません。 健康保険法で調整の対象と定められているのは、原則として「障害厚生年金(または障害手当金)」だからです。そのため、原則として障害基礎年金のみの場合は傷病手当金との調整対象にはなりません。
【一目でわかる】傷病手当金と障害年金の併給調整パターン一覧表
受給する年金の種類と傷病の関連性によって、手元に残る金額がどのように変わるかを以下の表にまとめました。
| 障害年金の種類 | 傷病の関連性 | 併給調整の有無 |
支給のルール(手元に残る総額)
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| 障害厚生年金(1級・2級・3級) | 同じ傷病 | あり |
障害厚生年金が優先。傷病手当金の日額が年金日額より高ければ【差額】を支給。年金が高ければ手当金は【支給停止】。
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| 障害厚生年金(1級・2級・3級) | 別の傷病 | なし |
調整なし。傷病手当金も障害厚生年金も【両方全額】支給。
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| 障害基礎年金(1級・2級のみ) | 同じ傷病 | なし |
調整なし。傷病手当金も障害基礎年金も【両方全額】支給。
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| 障害手当金(一時金) | 同じ傷病 | あり |
一時金として受け取った総額に達するまで、傷病手当金の支給が【一時的に停止】。
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👉 ポイント:同じ病気であっても、初診日にサラリーマンや公務員(厚生年金加入)だったか、自営業や主婦(国民年金のみ加入)だったかによって結果が大きく異なります。
同時に申請・受給する際の実務上の注意点と「返還金」リスク
実務上、非常にトラブルになりやすいのが「後から過去の分をまとめて請求する(遡及請求)」ケースです。
過去に遡って障害年金が決まった場合は返還義務が発生する
障害年金の申請には、過去の「障害認定日(初診日から1年6ヶ月経った日)」時点に遡って請求できる「遡及請求(そきゅうせいきゅう)」という方法があります。
これが認められると、過去数ヶ月〜数年分の障害年金が一括で振り込まれます。しかし、その遡った期間中にすでに傷病手当金を受け取っていた場合、後から健康保険組合から「重複期間の傷病手当金を返してください」という通知(返還請求)が届きます。
年金がまとめて入ってきたからといって使い込んでしまうと、後からの返還請求に対応できなくなるリスクがあるため、社労士などの専門家に返還額の予測を立ててもらうことが極めて重要です。
「同一の傷病かどうか」は健康保険組合や協会けんぽが個別判断する
「自分の受けている2つの病気は別物だから調整されないはず」と自己判断するのは危険です。
2つの病名が違っていても、医学的に因果関係があるとみなされる場合(例:糖尿病とそれによる糖尿病性腎症、うつ病と適応障害など)は、「同一の傷病」として扱われ、併給調整の対象になります。最終的な判断は、ご自身が加入している健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)が個別に行います。
傷病手当金から障害年金へスムーズに切り替えるための最適なタイミング
傷病手当金を受給できる期間は、支給開始から「最長1年6ヶ月」と決まっています。この期間が終わると傷病手当金は切れてしまうため、それ以降の生活費を確保するために障害年金へのスムーズな切り替えが必要です。
障害年金は、申請してから実際に最初の年金が振り込まれるまでに早くても半年〜8ヶ月程度の時間がかかります。
そのため、傷病手当金が終わってから障害年金の準備を始めたのでは、数ヶ月間にわたって収入が完全に途絶えてしまう「空白の期間」が生まれてしまいます。
👉 解決策:傷病手当金の受給が始まってから1年が経過したタイミング(または初診日から1年6ヶ月が経つ障害認定日の直前)を目安に、障害年金の申請準備を進めるのが最も安心なスケジュールです。当センターでは、この「空白期間」を作らないための切り替えサポートを多数お受けしています。
傷病手当金と障害年金の併給に関するよくある質問(FAQ)
Q. 傷病手当金を受給している間でも、障害年金の申請自体はできますか?
A. はい、まったく問題なく申請できます。 障害年金の申請手続き中に傷病手当金が止められることはありません。むしろ、審査にかかる期間(3ヶ月〜半年以上)を考慮すると、傷病手当金をもらっている最中から前もって障害年金の準備を進めておくのがベストな選択です。
Q. 併給調整で傷病手当金を返還することになったら、トータルで損をしますか?
A. 基本的にトータルの受給額で損をすることはありません。 返還が発生するのは、傷病手当金と障害厚生年金が重複し、年金側が優先されたためです。調整の結果として「手元に残る総額」は、傷病手当金単体の額か、あるいはそれ以上の金額(障害年金額が高い場合)になるよう設計されています。ただし、一時的に健康保険へまとまったお金を返還する手続きが必要になるため、事前の資金管理が必要です。
Q. 障害厚生年金3級の場合でも、傷病手当金は減額されますか?
A. はい、同じ病気であれば3級であっても減額・調整の対象になります。 障害厚生年金であれば、1級・2級・3級に関わらず、同一傷病による傷病手当金との間で併給調整が行われます。障害手当金(一時金)が支給される場合も同様に調整が入ります。
Q. 自分で健康保険組合に連絡して確認した方がいいですか?
A. 確認すること自体は可能ですが、聞き方や伝え方に注意が必要です。 不用意に「別の病気です」などと主張して後から因果関係が発覚した場合、不正受給を疑われたり、トラブルに発展したりするケースがあります。病気の関連性や併給調整の計算は複雑ですので、まずは障害年金を専門とする社労士へ事前にご相談いただくことを強くおすすめします。
まとめ|仕組みを正しく理解して損のない受給を
- 傷病手当金と障害年金は両方受給できるが、同じ病気なら傷病手当金が減額・停止される
- 障害厚生年金は調整対象だが、障害基礎年金のみ(あるいは別病気)なら両方全額もらえる
- 過去に遡って受給が決まると、傷病手当金の「返還義務」が発生するリスクがある
- 収入の空白期間を作らないために、傷病手当金受給中の早い段階から障害年金の準備を行う
傷病手当金から障害年金への切り替えや併給調整の仕組みは、初診日の年金制度や病気の関係性によって一人ひとり対応が異なります。自己判断で申請を進めてしまい、後から高額な返還金を請求されて慌てるケースも少なくありません。
当センターでは、これまでに12,000件以上の相談実績があり、傷病手当金との調整を見据えた安心のサポート体制を整えています。経済的な不安を解消し、損をせずスムーズに受給できるよう、まずは一度専門家へご相談ください。
ご相談について
傷病手当金を受給中で、今後の生活や障害年金への切り替えタイミングに不安を感じている方は、決して一人で悩まずに当センターへご相談ください。複雑な併給調整の計算や、返還金リスクを最小限に抑えるための申請スケジュールを、社会保険労務士がわかりやすく個別にご案内いたします。
状況に応じた具体的な進め方については、無料相談で個別にご案内しています。
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