人工血管の障害年金申請ガイド|原則3級の認定基準と不支給を防ぐ注意点

最終更新日: 2026-5-19 社会保険労務士 遠藤 隆

【結論】胸部・胸腹部大動脈に人工血管を置換した場合、障害厚生年金3級に認定される可能性があります。ただし、一般状態区分が「イ」または「ウ」であることが重要です。

人工血管(胸部・胸腹部大動脈)を置換した場合、障害厚生年金3級の対象になる可能性があります。ただし「一般状態区分イまたはウ」であることが重要です。

※本記事は「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」「日本年金機構公開資料」をもとに、障害年金実務に基づいて解説しています。

この記事が向いている方

✅ 大動脈解離や大動脈瘤などで人工血管の置換手術を受けた方、または受ける予定の方
✅ 手術を終えて復職したものの、疲れやすさや就労制限があり経済的なサポートを受けたい方
✅ 人工血管置換における障害年金の具体的な受給条件や金額を知りたい方
✅ 過去に手術を受けたが、今からでも遡って請求(遡及請求)できるか確認したい方

この記事の目次

  • そもそも障害年金とは?受給のための3つの基本要件
  • 人工血管とは
  • 人工血管における障害年金の認定基準と等級の目安
  • 申請するうえでの人工血管と人工弁との違い
  • 人工血管で受給できる障害年金の金額目安(2026年度版)
  • 【最重要】人工血管で障害年金を申請する際の4つの注意ポイント
  • 人工血管の障害年金申請における具体的な手続きの流れ
  • 人工血管で障害年金が不支給になるケース
  • 当センターの受給事例|急性大動脈解離による人工血管置換で3級を受給したケース
  • 人工血管の障害年金に関するよくある質問(FAQ)
  • まとめ|人工血管は「一般状態区分の証明」と「厚生年金」が受給の鍵

そもそも障害年金とは?受給のための3つの基本要件

障害年金とは、病気やケガによって日常生活や仕事に制限が生じた場合に、国から支給される公的年金です。原則として20歳から64歳までの方が対象となります。

人工血管で障害年金を受給するためには、以下の3つの基本要件をすべて満たしている必要があります。

  1. 初診日要件:大動脈疾患の症状(突然の激痛や背中の痛みなど)で、初めて医療機関を受診した日に公的年金に加入していること。
  2. 保険料納付要件:初診日の前日において、一定以上の年金保険料を納付または免除されていること。
  3. 障害状態要件:障害認定日(原則として初診日から1年6ヶ月が経過した日、または人工血管を置換した日)において、国が定める障害等級に該当していること。

👉 急性大動脈解離などの場合、激痛で救急搬送された日が「初診日」となるケースがほとんどです。

人工血管とは

人工血管とは、大動脈解離や大動脈瘤などで損傷した血管を人工素材で置き換える治療です。障害年金では、特に「胸部大動脈」「胸腹部大動脈」に対する人工血管置換術が重要となります。

人工血管における障害年金の認定基準と等級の目安

人工血管を置換した場合の障害等級は、原則として「3級」に認定されます。認定を受けるためには、「人工血管を装着していること」に加えて、診断書に記載される「一般状態区分表」の判定が「イ」または「ウ」に該当することが必須条件となります。

 

👉一般状態区分とは、病気によって日常生活や労働能力がどの程度制限されているかを示す評価基準で、「ア〜オ」の5段階で判定されます。

 

障害等級と一般状態区分の判定基準

等級 障害の状態(大動脈疾患)
一般状態区分表の該当目安
1級 心疾患・大動脈疾患の症状が極めて重篤で、安静時でも心不全症状があり、常時他人の介助が必要な状態。
オ(身のまわりのことはできるが、しばしば介助が必要で、終日就床している状態)
2級 日常生活に著しい制限があり、軽労働(事務作業など)すら行うことが困難な状態。
エ(身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば就床している状態)
ウ(歩行や軽度の労働はできるが、日常生活に著しい制限がある状態)
3級 胸部または胸腹部大動脈に人工血管(ステントグラフトを含む)を挿入・置換したもの。
ウ(上記と同様)
イ(軽度の労働に従事することはできるが、それ以上の活動には著しい制限がある状態)

⚠️ 注意:不支給となりやすい「区分ア」とは

人工血管の手術後に経過が非常に良好で、体調に全く不自由がない場合、医師によって一般状態区分が「ア(歩行や日常生活が制限なくでき、通常の労働が可能な状態)」と判断されることがあります。

 

👉 診断書で「区分ア」と記載されてしまうと、人工血管を装着していても「障害状態にない」とみなされ、不支給になる可能性が極めて高くなります。術後の疲れやすさや、医師から受けている運動・労働の制限(重いものを持てない等)は、必ず正確に医師に伝える必要があります。

申請するうえでの人工血管と人工弁との違い

人工弁 人工血管
原則3級 原則3級
一般状態区分不要 イ・ウ必要
現在診断書1枚で遡及可 2枚必要

人工血管で受給できる障害年金の金額目安(2026年度版)

人工血管で原則認定される「障害厚生年金3級」には、国による最低保証額が設けられています。受給できる年金額の目安は以下の通りです。

  • 障害厚生年金3級年額 635,500円(最低保証額) ※過去に支払った厚生年金保険料の金額(報酬比例部分)や厚生年金への加入期間によっては、この最低保証額以上の金額が支給されます。

 

👉 障害厚生年金3級は、働きながら受給しても年金額が減額されることはありません。術後の生活や体調に合わせた働き方を選ぶための、大切な経済的支えとなります。

【最重要】人工血管で障害年金を申請する際の4つの注意ポイント

人工血管における障害年金の申請には、実務上、見落としやすい重要なルールや特例が存在します。

①初診日に「厚生年金」に加入していることが必須(国民年金は対象外)

人工血管の原則等級は「3級」です。障害年金の制度において、3級が用意されているのは会社員や公務員が加入する「障害厚生年金」のみです。

 

👉 もしも初診日に自営業、主婦、学生、無職などで「国民年金(障害基礎年金)」に加入していた場合、障害基礎年金には3級がないため、人工血管を装着していても障害年金を受給することはできません。ここが実務上、最も見落としやすいポイントです。

②手術した日が「障害認定日」になる特例がある

通常、障害年金は初診日から1年6ヶ月が経過しないと申請できません。しかし特例として、初診日から1年6ヶ月以内に人工血管の置換手術を行った場合は、その「手術日(置換日)」が障害認定日となります。

 

👉 手術をした日からすぐに障害年金の申請手続きを進めることが可能です。

③遡及請求(さかのぼり請求)には診断書が「2枚」必要

過去に手術を受け、申請が遅れてしまった場合は、過去に遡って年金を請求する「遡及請求」が可能です。人工弁などの場合は「現在の診断書1枚」で遡及できる特例がありますが、人工血管の場合は原則通り「手術日(認定日)当時」と「現在」の2枚の診断書を取得する必要があります。

 

👉 認定日から時間が経ちすぎていると、当時のカルテが廃棄されて診断書が書けないリスクがあるため、早めの動向が求められます。

④対象となる傷病は「胸部・胸腹部大動脈疾患」に限られる

障害年金の認定基準で3級の対象とされているのは、「胸部大動脈解離(Stanford A型・B型)」や「胸部大動脈瘤」「胸腹部大動脈瘤」などです。

 

👉 腹部大動脈瘤のみに対する人工血管置換術(例:一般的な腹部EVARなど)の場合、この「人工血管置換=原則3級」という一発認定の基準には該当しません。腹部大動脈の場合は、術後の遠隔期合併症や臨床症状、検査数値によって個別に判断されるため、難易度が上がります。

 

心疾患・人工血管の詳しい手続きの流れや料金はこちら

人工血管の障害年金申請における具体的な手続きの流れ

人工血管で障害年金を申請する際は、以下のステップに沿って書類を準備します。書類の精度が結果を左右するため、慎重に進めましょう。

  1. 初診日の特定と証明:大動脈疾患で初めて受診した病院から「受診状況等証明書」を取得します。
  2. 診断書の作成依頼(最重要):手術を行った病院、および現在の主治医に障害年金専用の診断書(循環器疾患用)の作成を依頼します。この際、人工血管の置換事実や「一般状態区分(イまたはウ)」が正しく記載されているか確認します。
  3. 病歴・就労状況等申立書の作成:発病から現在までの治療経過や、仕事・日常生活でどのような制限(重いものを持てない、激しい運動の禁止、疲れやすさなど)があるかを自身で細かく記載します。
  4. 年金事務所への書類提出:すべての書類を揃え、お近くの年金事務所へ提出します。

👉 審査結果が出るまで、提出から通常3ヶ月〜4ヶ月程度かかります。

人工血管で障害年金が不支給になるケース

  • 一般状態区分が「ア」
  • 腹部大動脈のみ
  • 初診日が国民年金
  • 診断書に就労制限が反映されていない

【受給事例】

ケース①:50代男性(会社員)

  • 傷病名:急性大動脈解離(Stanford A型)
  • 手術:人工血管置換

👉 障害厚生年金3級

👉 年額約124万円

急性大動脈解離による人工血管挿入で、障害厚生年金3級を取得できたケース

ケース②:60代男性(無職)

  • 傷病名:急性大動脈解離(Stanford A型)
  • 手術:人工血管置換

👉 障害厚生年金3級

👉 年額約80万円

大動脈解離による人工血管挿入で障害厚生年金3級を取得、年額80万円を受給できたケース

人工血管の障害年金に関するよくある質問(FAQ)

Q. 人工血管の手術をすれば、仕事をしていても障害年金はもらえますか?
A. はい、働きながらでも受給可能です。人工血管による障害厚生年金3級は、就労していること自体で不支給になることは原則ありません。ただし、職場から「残業免除」「重労働の禁止」などの配慮を受けていることや、デスクワークであっても日常生活や労働に一定の制限(一般状態区分イまたはウ)がある実態が診断書に反映されている必要があります。

 

Q. 初診日に国民年金(自営業・主婦)だった場合、本当に1円ももらえないのですか?
A. はい、残念ながら人工血管のみ(原則3級相当)の状態では、障害基礎年金(1級・2級のみ)の対象外となるため受給できません。ただし、人工血管置換後に重い心不全を併発しているなど、日常生活が著しく制限される状態(2級以上)に悪化している場合は、国民年金であっても受給できる可能性があります。

 

Q. 腹部大動脈瘤で人工血管を入れましたが、3級の対象になりますか?
A. いいえ、原則として腹部大動脈のみの人工血管置換は、一発で3級となる大動脈疾患の基準(胸部・胸腹部大動脈)の対象外です。ただし、腹部であっても手術後に重篤な合併症がある場合や、他の心疾患を併発して日常生活に支障(一般状態区分イ・ウ以上)が出ている場合は、例外的に認められるケースもあります。

 

Q. ステントグラフト内弾術も「人工血管」に含まれますか?
A. はい、含まれます。大動脈瘤や大動脈解離に対して行われるカテーテル治療である「ステントグラフト内挿術(TEVARなど)」も、障害年金の認定基準においては「人工血管を挿入したもの」として同等に扱われます。胸部または胸腹部であれば原則3級の対象です。

まとめ|人工血管は「一般状態区分の証明」と「厚生年金」が受給の鍵

人工血管での障害年金申請における重要ポイントをまとめます。

  • 胸部・胸腹部大動脈に人工血管を置換した場合は、原則として障害厚生年金3級に該当する。
  • 受給するためには、初診日に厚生年金に加入していることが必須要件(国民年金は対象外)。
  • 診断書の一般状態区分が「イ」または「ウ」であることが条件。経過が良すぎて「ア」と書かれると不支給リスクが高まる。
  • 初診日から1年6ヶ月以内に手術をした場合、手術日が障害認定日となり、すぐに申請できる。
  • 遡及請求をする場合は、人工弁とは異なり「認定日」と「現在」の2枚の診断書が必要。

人工血管の手術をされた方は、外見からは病状が分かりにくいため、周囲に苦しみが伝わらないことも多いですが、体内には大きな負担がかかっています。要件を満たしていれば経済的支援を受けられますので、諦めずに確認することが大切です。

ご相談について

大動脈解離や大動脈瘤で人工血管の手術を受け、これからの仕事や生活に不安を感じていませんか?

「自分の一般状態区分は該当するのか」「初診日の証明が取れるか不安」など、少しでも気になることがあれば当センターへご相談ください。横浜・川崎エリアを中心に多数の心疾患・人工血管の受給実績を持つ社会保険労務士が、親身になってサポートいたします。

状況に応じた具体的な進め方については、無料相談で個別にご案内しています。

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②専門家のアドバイス

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③手続きの流れ説明

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