【社労士監修】就労移行支援とは?対象者・費用・メリットと事業所選びのコツを徹底解説
最終更新日: 2026-5-26 社会保険労務士 遠藤 隆
【結論】就労移行支援とは、一般企業への就職を目指す障害のある方を対象に、「就職準備」から「職場定着」までを一貫してサポートする国の福祉サービスです。
単に仕事のスキルを身につける職業訓練だけではなく、体調管理の習慣づけから就職活動のサポート、就職後に長く働き続けるためのフォローまで総合的な支援を受けられるのが大きな特徴です。本記事では、障害年金や就労支援の相談実務に携わる社労士が、制度の概要から失敗しない事業所の選び方までを徹底的に解説します。
この記事が向いている方
✅ 就労移行支援の具体的なサービス内容や対象者を知りたい方
✅ 利用にかかる費用や期間に不安がある方
✅ 就労移行支援と就労継続支援(A型・B型)の違いをすっきり整理したい方
✅ 自分に合った事業所の選び方や、実務でよくある失敗例を知りたい方
この記事の目次
- 【結論】就労移行支援とは?「就職から職場定着」まで一括サポートする制度
- 就労移行支援を利用できる方(対象条件)
- 就労移行支援の利用料(費用)はいくらかかる?
- 就労移行支援を利用するメリット・デメリット
- 【最重要】実務から見る就労移行支援事業所の選び方5つのポイント
- 事業所のタイプ別特徴
- 障害福祉サービスの違い|就労移行支援と就労継続支援(A型・B型)の比較
- 就労移行支援施設利用中に障害年金を受給するメリット
- 就労移行支援に関するよくある質問(FAQ)
- まとめ|就労移行支援は「正しい事業所選び」が成功の鍵
【結論】就労移行支援とは?「就職から職場定着」まで一括サポートする制度
厚生労働省によれば、就労移行支援は「一般就労を希望する障害者に対し、生産活動や職場体験等を通じて就労に必要な知識・能力の向上を図るサービス」とされています。
一般企業への就労を希望する18歳以上65歳未満の障害や難病のある方が、事業所に通いながら必要なスキルや就活対策を身につけていきます。「働くまで」だけでなく「働き続ける」ことを目的としている点が最大の強みです。
就労移行支援の主な4大支援内容
就労移行支援事業所が提供するサービスは、主に以下の4つのステップに分かれています。
- 職業訓練(スキルアップ) パソコンスキル(Word/Excelやプログラミング)、ビジネスマナー、軽作業、コミュニケーション訓練など、個人の目標に合わせた訓練を行います。
- 生活・体調管理(ベースづくり) 毎日安定して通うための生活リズムの構築、ストレス対処法(メンタルヘルス)の習得など、働く土台を整えます。
- 就職活動支援(マッチング) 履歴書・職務経歴書の添削、模擬面接、面接への同行、個々の特性に合った求人の開拓やキャリアカウンセリングを行います。
- 職場定着支援(アフターフォロー) 就職後、本人と企業の間に入って定期的な面談を行います。業務上の悩みや職場環境の調整をサポートし、早期離職を防ぎます。
👉 就労移行支援は、就職前の訓練から就職後の定着までを切れ目なく一貫して支援する制度です。
就労移行支援を利用できる方(対象条件)
就労移行支援の対象となるのは、以下の4つの条件をすべて満たしている方です。
- 一般企業への就職を目指し、働く意欲がある方
- 障害(身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病など)がある方
- 年齢が18歳以上65歳未満の方
- 原則として、現在は就労していない(離職中である)方
ここで実務上、多くの方が疑問に思われるのが「障害者手帳の有無」です。
👉 障害者手帳を持っていなくても、就労移行支援は利用できます。 手帳がない場合であっても、医師の診断書や定期的な通院実績、自治体(市区町村)の判断によって「サービス利用の必要性」が認められれば、受給者証が発行されて利用可能になります。
就労移行支援の利用料(費用)はいくらかかる?
就労移行支援の利用料は、前年の世帯所得(本人と配偶者の合算)に応じて負担上限月額が設定されています。結論からお伝えすると、利用者の約9割以上が自己負担0円(無料)でサービスを利用しています。
| 区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
| 生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 低所得 | 市民税非課税世帯 | 0円 |
| 一般1 | 市民税課税世帯(世帯収入が約600万円世帯以下)※1 | 9,300円 |
| 一般2 | 上記以外の世帯 | 37,200円 |
※1:入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は除く。
利用期間は原則として最長24か月(2年間)です。市町村の判断により必要性が認められた場合には、最大1年間の延長が認められるケースもありますが、基本は2年間の計画的な利用を前提としています。
就労移行支援を利用するメリット・デメリット
就労移行支援には多くの強みがありますが、一方で事前に把握しておくべき注意点もあります。
クリックできる目次
メリット|就職への不安を解消できる5つの強み
- 体調や生活リズムが整う:毎日一定の時間に通所することで、規則正しい生活習慣が身につきます。
- 自分の強み・弱みが明確になる:客観的な評価を通じて、障害特性に合った働き方や職種を見つけられます。
- 実践的なスキルが身につく:事務職、IT、軽作業など、進路に応じた訓練を受けられます。
- 就活のプロに伴走してもらえる:書類選考や面接の対策を一人で抱え込まずに進められます。
- 就職後の定着率が高い:定着支援があるため、1人で就活した場合に比べて長く働き続けられる確率が大幅に上がります。
デメリット|利用前に知っておくべき4つの注意点
- 原則としてアルバイトができない:就労移行支援は「現在働けない人が就職を目指す」場であるため、通所中のアルバイトは原則禁止されています(自治体により一定の例外あり)。
- 原則として給料や工賃は支給されない:就労継続支援とは異なり、訓練に対する給与は発生しません。
- 事業所によって支援の質やカリキュラムに差がある:IT特化型、事務職重視型など、事業所ごとに特色が大きく異なります。
- 一般枠(障害を開示しないクローズ就労)での就職には不向きな場合がある:基本的には障害者雇用(オープン就労)を目指すカリキュラムがメインです。
【最重要】実務から見る就労移行支援事業所の選び方5つのポイント
就労移行支援で就職に繋げられるかどうかは、「どの事業所を選ぶか」でほぼ決まります。実務の現場でも、選び方を誤って途中で通えなくなってしまうケースが少なくありません。
以下の5つの基準を持って選ぶことが大切です。
① 自分の目的に合ったプログラムがあるか
事務職に就きたいならPCや資格取得講座、クリエイティブ職ならWebデザインやプログラミング、工場や軽作業なら軽作業訓練など、希望の職種に直結するカリキュラムがあるかを確認しましょう。
② 自分の障害特性に対する専門性や理解があるか
精神障害、発達障害、身体障害など、障害の種類によって必要なサポートは異なります。「精神障害の方のメンタルケア体制が整っているか」「発達障害特有のコミュニケーション支援の実績があるか」など、同系統の障害の支援実績を確認してください。
③ 通いやすさ(アクセスと体力面)
就労移行支援は「週に数日〜毎日」継続して通うことが前提です。自宅からの距離が遠すぎたり、電車の乗り換えが複雑すぎたりすると、通所自体が大きな負担になり体調を崩す原因になります。当センターが拠点を置く横浜市や川崎市などのエリアでも、通いやすい沿線の事業所を選ぶことが推奨されます。
④ 事業所の雰囲気とスタッフとの相性
実際に通っている他の利用者の雰囲気や、支援員(スタッフ)とのコミュニケーションの取りやすさは非常に重要です。こればかりはWEBサイトの情報だけでは分からないため、必ず事前に「見学」や「体験通所」を行うようにしてください。
⑤ 就職実績と「職場定着率」
単に「何人が就職したか(就職率)」だけでなく、「就職した後にどれくらいの期間辞めずに働けているか(定着率)」の実績を確認してください。定着率が高い事業所は、企業との連携やアフターフォローがしっかりしている証拠です。
実務現場でよくある「事業所選び」の失敗例
【失敗例の共通点】 「家から一番近かったから」「なんとなく雰囲気が良さそうだったから」という理由だけで見学をせずに決めてしまい、いざ通い始めると「やりたい訓練が全くなかった」「スタッフとの相性が悪く、メンタルを崩して途中で辞めてしまった」というケースです。 就労移行支援の利用期間(原則2年)は人生において貴重な時間です。必ず複数の事業所を比較検討しましょう。
事業所のタイプ別特徴
| タイプ | 向いている人 |
| 事務系特化 | 一般事務希望 |
| IT特化 | プログラマー希望 |
| 発達障害特化 | ASD・ADHD |
| 精神障害特化 | うつ病・双極性障害 |
障害福祉サービスの違い|就労移行支援と就労継続支援(A型・B型)の比較
就労移行支援と混同しやすい制度に「就労継続支援(A型・B型)」があります。これらは目的と仕組みが大きく異なります。
就労支援サービスの比較表
| 項目 | 就労移行支援 | 就労継続支援A型 |
就労継続支援B型
|
| 主な目的 | 一般企業への就職を目指す | 雇用契約を結んで働く |
自分のペースで作業を行う
|
| 雇用契約 | なし | あり | なし |
| 給料・工賃 | 原則なし | 給与あり(最低賃金以上) |
工賃あり(成果に応じた少額)
|
| 利用期間 | 原則2年以内 | 制限なし | 制限なし |
| 対象者 | 一般就職が可能な見込みがある方 | 現時点で一般就職は難しいが、雇用契約に基づく就労が可能な方 |
体力や年齢の理由で雇用契約を結んで働くことが困難な方
|
👉 「一般企業で働きたい、そのために訓練を受けたい」という方は就労移行支援を、「まずは福祉的な環境で働きながら収入を得たい」という方は就労継続支援を選択するのが適切です。
就労移行支援施設利用中に障害年金を申請するメリット
就労移行支援施設通所中でも障害年金は受給できます。そのメリットは、
- 生活費を確保できる
- 就職準備に集中できる
- 焦って働かなくて済む
等が挙げられます。
就労移行支援に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 障害年金を受給しながら就労移行支援を利用することはできますか?
A1. はい、障害年金を受給しながら就労移行支援を利用することは完全に可能です。 障害年金の受給は、福祉サービスの利用を制限するものではありません。むしろ、就労移行支援に通っている期間中の生活費(収入面)を障害年金でカバーすることで、安心してリハビリや訓練に専念できるという大きなメリットがあります。 ▶ 当センターの受給事例はこちら
Q2. すでにフルタイムで働いているのですが、働きながら利用できますか?
A2. 原則として、すでにフルタイムで就労している方は対象外となります。 就労移行支援は「現在は一般企業で働くことが困難な休職中・離職中の方」を対象とした制度だからです。ただし、現在の職場を退職することが決まっている、あるいは自治体が特に必要性を認めた場合など、例外的に認められるケースもあります。
Q3. 利用期間の2年を過ぎても就職が決まらなかった場合はどうなりますか?
A3. 原則は2年で終了となりますが、市区町村(自治体)の判断によって最大1年間の延長が認められる場合があります。 「あと数か月で就職が内定しそう」「就職活動が具体的な段階に進んでいる」など、特別な事情や必要性が認められた場合に限られます。万が一、期間内に一般就職が難しかった場合は、就労継続支援への移行など次のステップを検討することになります。
Q4. 就労移行支援を利用すると、障害年金の更新(審査)に影響しますか?
A4. 就労移行支援に通っている事実だけで、すぐに障害年金が不支給になるわけではありません。 障害年金の審査で最も重要視されるのは「日常生活や労働にどの程度の支障があるか」です。就労移行支援に通期できているということは、一定の活動能力があると見なされる要素にはなりますが、それだけで支給が止まることはありません。ただし、更新時の診断書には現在の状況を正確に記載してもらう必要があります。
まとめ|就労移行支援は「正しい事業所選び」が成功の鍵
就労移行支援の重要ポイントを振り返ります。
- 就労移行支援は、一般就職から職場定着までをトータルサポートする国の制度
- 利用料は全体の約9割以上の方が自己負担0円(無料)で利用している
- 利用期間は原則2年間で、障害者手帳がなくても医師の診断書等があれば利用可能
- 成功の鍵は「自分の目的や障害特性に合った事業所を、見学・体験を経て選ぶこと」
就労移行支援は、一歩を踏み出したい方にとって非常に心強い制度です。制度の活用とあわせて、生活の安定のために障害年金の申請を並行して検討することも重要な選択肢となります。
ご相談について
「就職に向けた準備を始めたいけれど、生活費が不安で一歩を踏み出せない」「障害年金を申請しながら就労移行支援に通えるか詳しく知りたい」といったお悩みを抱えていませんか?
当センターでは、障害年金の申請サポートを通じて、皆様が安心して次のステップ(就労移行支援への通所や就職)へ進めるよう、経済的な基盤づくりをお手伝いしています。状況に応じた具体的な進め方については、無料相談で個別にご案内しています。
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