脳脊髄液減少症とは
脳脊髄液腔から脳脊髄液(髄液)が持続的あるいは断続的に硬膜外に漏出したり、脱水などにより失われることによって髄液が減少し、起立時に脳が下方へ牽引され、頭痛(起立時に起こります)を主症状として、その他、頚部痛、めまい、耳鳴り、倦怠感などさまざまな症状を呈する病態です。
しかし、現時点ではその発症機序や原因には不明な点が多く、交通事故によるむち打ち症後遺症と深く関わることがあり、交通事故以外にスポーツ外傷、転倒・転落、出産などもこの疾患の原因となると考えられています。
しかしながら、現状ではこの疾患に対する認知度は低く、懐疑的な意見もあり、脳脊髄液減少症であるにもかかわらず、適切に診断されない症例も少なくはありません。
脳脊髄液減少症の症状とは
急性期の主症状は、起立性頭痛が最多で重要ですが、頚部痛、悪心、めまい、耳鳴、視覚異常などを伴うこともあります。
慢性化に伴い全身倦怠感をはじめとして種々の症状の訴えが多くなるようです。
なお、急性の強い起立性頭痛(数分間さえ座ることが出来ないほどの)は「低髄液圧症」の可能性が高く、速やかに臥床安静療法を開始すべきです。
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慢性期症状として
①頭痛(起立性が主)、頚〜腰痛、四肢痛などの疼痛症状
②全身倦怠感、易疲労性
③めまい、耳鳴、視機能障害(視力低下、まぶしいなど)などの脳神経症状その他に顔面痛や違和感、咽頭違和感、顎関節症状、など
④動悸、息切れ、消化器症状(悪心、食思不振、下痢など)、体温調節異常などの自律神経症状
⑤注意力低下・記憶力低下、うつなどの高次脳機能症状
⑥その他:不眠、易感染性、内分泌症状など
上記の症状の中では、①②は程度の差はあっても通常、訴えとしてあり、どちらかがない場合は例外的です。また①②のいずれもない場合は否定的と考えます。
したがって①②に加えて③〜⑥のいくつかの症状を、連日性かつ長期間にわたって訴える病状が多いようです。
ただし、外傷例や他病態を合併している場合には、このような症状が「脳脊髄液減少症」によらない場合もあります。
病状の特徴
1)起立・座位で悪化やすい
2)天候・気圧の変化の影響を受けやすい
3)水分摂取が症状緩和に有効
などがありますが、全ての症例に当てはまるわけではありません。
治療法
脳脊髄液減少症に対して有効な治療として、「ブラッドパッチ療法」(硬膜外自家血注入療法)があります。
脊髄液が硬膜から漏出している場合に、患者から採取した血液を硬膜に外に注入し、漏出を止める治療法です。
ブラッドパッチ療法については、平成28年4月から保険適用となっています。
脳脊髄液漏出症の初診日
以前は、脳脊髄液漏出症の確定診断を受けた日が初診日とされていました。
しかし、医者のなかでもこの病気を知らない方もいるなど、診断がつくまでに時間がかかるため、異常を感じて受診した日から何年も経った日が初診日とされ、年金請求上は不利になることが多かったのです。
なぜなら、異常を感じたときは会社勤めで厚生年金に加入していた方も、病状のため退職せざるを得なくなることが少なくない病気だからです。
何カ所も病院を渡り歩き、確定診断されたときは、無職=国民年金に加入中で、年金の額が少ない、あるいは3級で認定され年金が支給されないことがありました。
また初診日が後ろにずれ込むということは、遡及請求をしても遡及額が減少する事にもなりますし、最悪の場合障害認定日がまだ来ず、請求自体ができないということもありえます。
そこで厚生労働省は「脳脊髄液漏出症に係る障害年金の初診日の取扱いについて」(令和元年12月18日事務連絡)において、交通事故など、請求者が脳脊髄液漏出症の原因について提出書類等を通じて発生年月日を証明できる事象である旨を申し立てており、かつ、所定の要件に該当する場合においては、原則として、申立初診日を障害年金初診日として取り扱うことと致しました。
なお、申立初診日を脳脊髄液漏出症に係る障害年金初診日として認めることが適当ではない理由がある場合には、個別事例ごとの事情に応じて、提出書類の内容等を総合的に考慮して、判断を行うことも示されています。
診断書作成に当たって
脳脊髄液減少症で障害年金を申請するにあたっては、「認定が困難な疾患にかかる照会様式等の窓口配布の協力依頼について」別紙5において、診断書(肢体の障害用 様式第120号の3)の㉑「その他の精神・身体の障害の状態」欄に「日中(起床から就床まで)の臥位(臥床)(横になること)時間を記載するよう求めていますので必ず記入してもらいましょう。