網膜色素変性症(指定難病90)

最終更新日: 2025-12-21 社会保険労務士 遠藤 隆

1.網膜色素変性症とは

網膜色素変性症は、網膜の視細胞が徐々に障害される遺伝性・進行性の疾患です。視細胞には暗所視や視野に関わる杆体細胞と、中心視力や色覚を担う錐体細胞の2種類がありますが、本症ではまず杆体細胞が障害されるため、暗い場所で見えにくくなる夜盲や視野狭窄が初期症状として現れます。進行すると錐体細胞も影響を受け、視力低下や色覚異常、まぶしさなどの自覚症状が増えていきます。ただし進行速度は個人差が非常に大きく、若い時期に大きく視機能が落ちる人もいれば、高齢になっても良好な視力を保つ人もいます。

 

2.どのくらいの患者さんがいるのですか

患者数は4,000〜8,000人に1人とされ、約半数の患者で遺伝が確認されます。遺伝形式は常染色体潜性(劣性)、常染色体顕性(優性)、X連鎖性など複数あり、家系内に同じ患者が複数いる場合には発症リスクが高まります。

 

3.病気の原因はなんですか

原因となる遺伝子は多岐にわたり、日本ではEYS遺伝子の変異が多いことが分かっています。近年は解析技術の進歩により遺伝子診断が容易になり、一部では保険診療での検査も可能になりました。特にRPE65遺伝子の変異が確定した場合には遺伝子治療の対象となる可能性があります。

 

4.どのような症状ですか

症状は夜盲や視野狭窄から始まり、運転や歩行で周囲にぶつかりやすくなるなど日常で支障が出ることがあります。視力や色覚異常は後から現れるのが一般的ですが、印刷物のコントラストが分かりにくい、光をまぶしく感じるなど早期からみられるケースもあります。病気は進行性のため定期的な検査が重要で、最近では光干渉断層撮影(OCT)や自発蛍光撮影が診断精度向上と進行評価に役立っています。また白内障を合併しやすく、手術が必要になることがありますが、術後の調整や合併症への注意が必要です。

 

5.どのような治療法がありますか

現在、網膜色素変性症を根本的に治す確立した治療法はありませんが、進行を遅らせたり症状を緩和する方法はいくつかあります。遮光眼鏡によるまぶしさの軽減、ビタミンA製剤や循環改善薬の内服、弱視補助具の利用などが対症療法として用いられます。特に拡大読書器や音声読み上げソフトなどの補助機器は、視力が低下してからも生活の質を保つうえで重要です。さらに遺伝子治療、人工網膜、iPS細胞による再生医療など研究は進んでおり、一部は臨床応用が始まっています。

 

6.注意点はありますか

進行の仕方は人によって大きく異なるため、自分の視力・視野の変化を理解し、専門医の診察を継続していくことが大切です。定期的に検査を受けることで進行度を把握し、生活の工夫や補助具の活用、将来への準備を行うことが重要になります。

 

7.障害年金申請のポイント

視覚障害は検査数値によって等級が決まってきます。視力で申請するのか視野で申請するのか、検査数値をよく確認し障害認定基準と照らし合わせて下さい。

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社会保険労務士 遠藤 隆
社会保険労務士 遠藤 隆
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