「統合失調症」とは
統合失調症は、心や考えがまとまりづらくなってしまう病気です。その為気分や行動、人間関係などに影響が出てきます。統合失調症には、健康なときにはなかった状態が表れる陽性症状と、健康なときにあったものが失われる陰性症状があります。
陽性症状の典型は、幻覚と妄想です。幻覚の中でも、周りの人には聞こえない声が聞こえる幻聴が多くみられます。
陰性症状は、意欲の低下、感情表現が少なくなるなどがあります。周囲から見ると、独り言を言っている、実際はないのに悪口を言われたなどの被害を訴える、話がまとまらず支離滅裂になる、人と関わらず一人でいることが多いなどのサインとして表れます。
早く治療を始めるほど、回復も早いといわれていますので、周囲が様子に気づいたときは早めに専門機関に相談してみましょう。
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1.特徴
統合失調症は、脳の様々な働きをまとめることが難しくなるために、幻覚や妄想などの症状が起こる病気です。ほかの慢性の病気と同じように長い経過をたどりやすいですが、新しい薬や治療法の開発が進んだことにより、多くの患者さんが長期的な回復を期待できるようになっています。
統合失調症の症状でよく知られているのが、「幻覚」と「妄想」です。幻覚とは実際にはないものをあるように感じる知覚の異常で、中でも自分の悪口やうわさなどが聞こえてくる幻聴は、しばしば見られる症状です。
妄想とは明らかに誤った内容を信じてしまい、周りが訂正しようとしても受け入れられない考えのことで、いやがらせをされているといった被害妄想、テレビやネットが自分に関する情報を流していると思い込んだりする関係妄想などがあります。
こうした幻覚や妄想は、本人にはまるで現実であるように感じられるので、病気が原因にあるとはなかなか気づくことができません。
日本での統合失調症の患者数は約80万人といわれています。また、世界各国の報告をまとめると、生涯のうちに統合失調症を発症する人は全体の人口の0.7%と推計されます。100人に1人弱。決して少なくない数字です。それだけ、統合失調症は身近な病気といえます。
2.原因
発症の原因は正確にはよくわかっていませんが、統合失調症になりやすい要因をいくつかもっている人が、仕事や人間関係のストレス、就職や結婚など人生の転機で感じる緊張などがきっかけとなり、発症するのではないかと考えられています。
治療によって急性期の激しい症状が治まると、その後は回復期となり、徐々に長期安定にいたるというのが一般的な経過です。
なかにはまったく症状が出なくなる人もいますが、症状がなくなったからといって自分だけの判断で薬をやめてしまうと、しばらくして再発してしまうことも多いので注意が必要です。主治医と相談することが大切です。
統合失調症も糖尿病や高血圧などの生活習慣病と同じで、症状が出ないように必要な薬を続けながら、気長に病気を管理していくことが大切です。
3.病状
統合失調症で多く現れる症状は幻覚や妄想です。幻覚とは実際にはないものが感覚として感じられることです。とてもはっきりと聞こえたり見えたりするために、脳の中だけで起きているとは考えにくいものです。
妄想とは、明らかに間違った内容を信じてしまい、周りの人たちが訂正しようとしても自分では受け入れられない考えのことです。自分には聞こえたり、見えたりするのに、家族や友達、同僚、上司、医師などの周りの人たちが皆「そんなことはない」と否定するときには、幻覚や妄想の可能性があります。
統合失調症に多い幻覚や妄想の症状は、本人には現実味があってそれが病的な症状だとは気づきにくいものです。周りの人が気づくことが、早期発見の第一歩となります。家族や周囲の方に以下のようなサインがあることに気づいた時には、相談窓口などに相談してみて下さい。
幻覚や妄想のサイン
- いつも不安そうで、緊張している
- 悪口をいわれた、いじめを受けたと訴えるが、現実には何も起きていない
- 監視や盗聴を受けていると言うので調べたが、何も見つけられない
- ぶつぶつと独り言を言っている
- にやにや笑うことが多い
- 命令する声が聞こえると言う
そのほかのサイン
認知機能の障害:
- 日常生活における理解力が低下したり、記憶力が低下して、社会生活における問題解決能力が低下します。
会話や行動の障害:
- 話にまとまりがなく、何が言いたいのかわからない・相手の話の内容がつかめない
- 作業のミスが多い
意欲の障害:
- 打ち込んできた趣味、楽しみにしていたことに興味を示さなくなった
- 人づきあいを避けて、引きこもるようになった
- 何もせずにゴロゴロしている
- 身なりにまったくかまわなくなり、入浴もしない
感情の障害:
- 感情の動きが少なくなる
- 他人の感情や表情についての理解が苦手になる
4. 統合失調症の治療法
統合失調症の治療は、薬をつかった治療(薬物療法)と、専門家と話をしたり、リハビリテーションを行う治療(心理社会療法)を組み合わせて行います。
治療の目標
- 幻覚や妄想などの症状を軽くする
- 記憶や注意などの障害によって社会生活機能が低下するのを防ぐ
- 回復後は再発しないように維持する
治療の方法
薬物療法と心理社会的な治療は車の両輪のようにどちらも重要で、組み合わせて行なわれます。
薬物療法
おもに使われる薬
- 抗精神病薬(中心となる症状を抑える)
場合によっては補助的に使われることがある薬
- 抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬、気分安定薬(中心となる症状への効果は期待されていない)
薬はいつまで続けるのか
- 薬をいつまで続けるのかは、個人差があり一口にはいえません。症状の安定をみながら、減量や増量を行い調整していきますが、その判断は専門医でなくては難しいものです。
再発を繰り返すことが多い疾患なので、しばらく症状が安定しているからといって自己判断で薬の量を減らしたり中止したりすることは、再発を誘発して重症化の危険を高めます。「副作用がつらい」「薬をやめたい、減らしたい」などの悩みがあれば、医師に相談しましょう。
心理社会的な治療
病気の自己管理の方法を身につけたり、社会生活機能のレベル低下を防ぐ訓練などを行うもので、精神療法やリハビリテーションが含まれます。就労支援などの社会的サポートも重要です。病状や生活の状態に合わせて、様々な方法が用いられます。
(例)
- 心理教育
病気や治療に関する知識を身につけて、対処法を学ぶ - 生活技能訓練(SST)
ロールプレイ等を通じて、社会生活や対人関係のスキルを回復する訓練を行う - 作業療法
園芸、料理、木工などの軽作業を通じて、生活機能の回復を目指す - 認知矯正療法
認知課題とそれを日常生活に橋渡しする言語セッションを行い、社会機能の回復を目指す - 就労支援
援助付き雇用プログラムなど、当事者毎の個別のニーズを踏まえて包括的な支援を行う
5.障害認定基準
障害認定基準によると精神の障害による障害の程度は、次により認定されます。
1.認定基準
精神の障害については、次のとおりです。
令 別 表 |
障害の程度 |
障 害 の 状 態 |
|
国 年 令 別 表 |
1 級 |
精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる 程度のもの |
|
2 級 |
精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる 程度のもの |
||
厚 年 令 |
別表第1 |
3 級 |
精神に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著し い制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
精神に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加え ることを必要とする程度の障害を有するもの |
|||
別表第2 |
障害手当金 |
精神に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加え ることを必要とする程度の障害を残すもの |
精神の障害の程度は、その原因、諸症状、治療及びその病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとします。
日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの、及び労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するものを3級に、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すものを障害手当金に該当するものと認定します。
精神の障害は、多種であり、かつ、その症状は同一原因であっても多様です。 したがって、認定に当たっては具体的な日常生活状況等の生活上の困難を判断するととも に、その原因及び経過が考慮されます。
2. 認定要領
精神の障害は、「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」、「気分(感情)障害」、「症状性を含む器質性精神障害」、「てんかん」、「知的障害」、「発達障害」に区分されます。
症状性を含む器質性精神障害、てんかんであって、妄想、幻覚等のあるものについては、 「A 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害」に準じて取り扱います。
統合失調症で各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次の通りです。
障害の程度 |
障 害 の 状 態 |
1 級 |
高度の残遺状態又は高度の病状があるため高度の人格変化、思考障害、その他 妄想・幻覚等の異 常体験が著明なため、常時の援助が必要なもの |
2 級 |
残遺状態又は病状があるため 人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があるため、 日常生活が著しい制限を受けるもの |
3 級 |
残遺状態又は病状があり、人格変化の程度は著しくないが、思考障害、その他 妄想・幻覚等の異常体験があり、労働が制限を受けるもの |
(2)障害の認定に 当たっては、次の点を考慮のうえ慎重に行われます。
統合失調症は、予後不良の場合もあり、国年令別表・厚年令別表第1に定める 障害の状態に該当すると認められるものが多いです。しかし、罹病後数年ないし十数年の経過中に症状の好転を見ることもあり、また、その反面急激に増悪し、その状態を持続することもあります。したがって、統合失調症として認定を行うものに対しては、発病時からの療養及び症状の経過が十分考慮されます。
(3)日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努められます。
また、現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分考慮したうえで日常生活能力が判断されます。
(4) 人格障害は、原則として認定の対象となりません。
(5) 神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象となりません。
ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱かわれます。 なお、認定に当たっては、精神病の病態がICD-10による病態区分のどの区分に属す病態であるかを考慮し判断されます。