失業保険とは
失業保険とは、公的保険制度の一種で、正式には「雇用保険」と言います。加入者は、失業した場合や自己都合での退職にあたり、「失業手当(正式には基本手当)」を受給することができます。
失業手当は、雇用保険の被保険者が退職(離職)した際に、安定した生活を送りつつ、1日でも早く再就職するための支援として給付され、新しい職に就くまでの経済的支えになる制度です。働いていた頃の賃金の45%~80%に相当する額が、失業している期間(原則は最大1年間のうちの所定の日数分が限度)支給されます。ただし、離職したすべての人が失業手当をもらえるわけではありません。
この失業保険の基本手当(失業手当)を受け取るには、「就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない」という、ハローワークが定める“失業の状態”であることが前提となります。
そのため、退職してすぐに転職する人や就職する意思がない人、ケガや病気、妊娠・出産などですぐに就職するのが困難な人などは、失業手当を受け取ることができません。
障害年金とは
一方、障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。等級によって状態は様々ですが、例えば障害厚生年金3級の対象者は以下のようになっています。
「労働が著しい制限を受けるか、または労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。傷病が治らないものにあっては、労働が制限を受けるか、または労働に制限を加えることを必要とする程度のもの。」
すなわち、仮に労働ができるとしても、通常のような労働はできない状態が3級に該当するといえます。
併給調整について
社会保険の給付の中には、同一の原因に対しては、複数の給付を重複して支給しないという併給調整の仕組みを規定しているものがあります。
併給調整が規定されているものについては、複数の給付について受給資格がある場合でも、すべてを全額支給せず、一つを給付すると、他の給付額を一定割合で減額したり、他の給付の一部や全部を支給停止したりすることになります。
例えば、「健康保険からの傷病手当金」と「国民年金や厚生年金保険からの障害年金」は併給調整されることになっており、同時期について両方を満額受給することはできません。
これらを同時期に併給していた場合は、傷病手当金を返還することになっています。
では、雇用保険からの失業手当と、国民年金や厚生年金保険からの障害年金には、併給調整があるかと言いますと、「雇用保険からの失業手当」と「国民年金や厚生年金保険からの障害年金」には併給調整の規定はありません。
すなわち、同時期に両方を受給しても片方が減額されるなどということはなく、両方を受給することができます。
失業保険と障害年金の場合
しかし「労働する意思と能力がある」場合に給付される失業手当と「病気やケガで働けない」場合に支給される障害年金の両方を貰えるという事に、矛盾はないのでしょうか。
御相談者様の中には、「失業給付を貰っていることを先生は知っているのに、障害年金の診断書なんか書いてくれないのではないですか?」とご心配になる方がいらっしゃいますが、もし先生にそう指摘されたら以下の様にご説明ください。
障害年金の受給を考えている方の中には、「障害者枠で働きたい」「病気やケガに配慮された環境下なら働ける」といった何らかの制限下なら働ける方もいらっしゃいます。
障害年金における「働けない」というのは「全く働くことができない」状態だけを指しているわけではなく、「一般社員と同様には働けないが、制限を受けながらも一定程度は働ける」という状態も含んでいます。
したがって、「労働する意思と能力がある」「病気やケガが原因で、働くことに何らかの制限がある」という二つは矛盾していないのです。
また障害年金には、身体の状態で受給がほぼ確定できるものがあります。
例えば、両足の筋力が消失して車いすを常時使用している場合は、障害年金1級に該当します。
この方が「車いすでの移動ができる環境下であれば正社員としてバリバリ働けるのに、仕事が見つからない」という場合は、障害年金を受給しつつ、正社員としての求職申し込みをして失業手当を受給することには何ら問題はない訳です。